雪と断罪とそして、紅
変な女……。
ハンカチを頬に当てながら俺も女から視線をそらす。
「こ、怖くないです……」
ふと、聞こえた弱々しい声に俺はもう一度女の方を見た。
「貴方は優しい人……。怖くない……です……」
弱々しい声のはずなのに、何処かその声には芯の強さを感じる。
でも、まあ……。
「俺を優しいって言ったのはあんたが初めてだ……」
照れ臭くて視線をそらすと、その女は……黒代は穏やかに笑った。
優しいのは黒代の方だ。
こんな喧嘩に明け暮れている俺みたいな人間のクズを助けてくれる。
「俺……神代慎哉って言うんだけど、あんたは?」
「私は黒代です……、清野黒代です」
何だか、久々に穏やかな気分だった。