雪と断罪とそして、紅
すると、切碕は俺に手を差し伸べて来た。
「君は異常者なんかじゃないよ。異常なのはこの世の中だ。……僕と一緒に世の中を改めてみない?」
切碕の言葉に身震いがした。
恐怖じゃない。
この男と行けば、もっとたくさんの肉を断つことができる──。
そんな狂喜で身震いがしたんだ。
「俺は……あの男みたいな男をぶっ殺したい……。あんたと行けば出来んのか?」
「愚問だよ。僕は君と逆でね、≪彼女≫みたいな女の子を殺したいんだ」
切碕の指す≪彼女≫が誰のことかは分からないが、恐らく切碕にとって恨む相手であり、愛しい相手なのだろう。
その証拠に≪彼女≫と言ったときの切碕の顔は言っている言葉とは裏腹に、穏やかだった。
「……あんたと行くよ」
俺は揺るがなかった。
切碕が女を殺そうと俺にはどうでも良い。
俺には黒代しかいないし、殺した男みたいな男は世の中にはたくさんいる。
俺は差し出された切碕の手を握ると立ち上がった。
「君、名前は?」
「……黛だ。代わる黒で、黛」
切碕は口角を持ち上げると「僕の仲間にふさわしい名前だね」と笑った。
俺を慎哉と呼ぶのは黒代だけでいい。
黒代……、俺はお前の憎しみも抱えて生きていく。
だから、見ててくれな……。