雪と断罪とそして、紅
ビルの屋上に上がって柵を飛び越えれば、一歩先はもう何もない。
一歩踏み出せば、あたしの体は重力に引かれるようにして地面に叩きつけられるだろう。
痛いのかな?
でも、ビルの高さによっては落ちている最中に気を失うって聞いたことがある。
5階建てのビルじゃあ、それは期待できないかもしれないけど……。
「まあ、良いや……。もう痛くないなら一瞬の痛みくらい耐えられる」
一歩踏み出せば、体は当たり前のように下へ引っ張られる。
……これで楽になれる。
そう思っていたのに、誰かがあたしの手首を掴んで落ちていこうとした体をビルの縁へと引き摺り戻した。