雪と断罪とそして、紅
「楊お嬢様!何処にいらっしゃられるのですか!?あぁ、もう!本当にお転婆でいらっしゃるんだから!」
私を呼びながら屋敷内を探し回って、悪態を吐いているメイド達。
屋敷の中をいくら探し回ったところで私は見つからない。
何せ、私は屋敷の庭の木の上にいるんだから。
でも、一人だけ私を必ずと言って良い程見つける男がいる。
その男は──。
「此処にいらっしゃいましたか、楊お嬢様」
ほら、やっぱり見つけた。
私は読んでいた本から顔を上げると、木の下を見下ろした。
「……相変わらずそなたは私を見つけるのが早いな」
「当然でございます。この瀧澤、楊お嬢様にお仕えするのが仕事ですので」
私を穏やかな顔で見上げる男──瀧澤は私の専属の世話役だ。
そして、私の好きな人でもある。
好きな人と言っても私と瀧澤が結ばれることは無い。
私は跡取り娘だし、瀧澤は一介の使用人。
結ばれるなんて有り得ない。