雪と断罪とそして、紅
「名家って言っても≪三名家≫には劣る名家ですけどね」
確かにうち──邉巳(ヘンミ)家は名家と言われている。
でも、うち以上に名家と言われる名家は存在している。
≪三名家≫と呼ばれる≪蓬條家≫、≪寿永家≫、≪藤邦家≫だ。
その三つの名家は他の名家よりも高貴で各分野のトップに君臨し、日本は三名家が無くては成り立たないほど。
「名家だから妾を持つ……。噂では三名家の当主達は皆愛妻家、妾を持つなど──」
もう一つ嫌味を言ってやろうとしたら、頬に痛みが走る。
お父様が私の頬に平手打ちしたからだ。
「私は間違っていない!あんな奴らが三名家と崇め讃えられる等有り得ん!私が……邉巳が奴等に劣るなど……」
お父様は怒りで顔を真っ赤にしていた。
あぁ、またそんなことを言っている……。
どんなに喚いても邉巳では≪三名家≫には勝てない。
父が≪三名家≫を見下している限りは。
私はため息を吐くと、お父様の書斎を後にした。
後ろからお父様の怒鳴り声と癇癪を起こして何かを壊す音がする。