雪と断罪とそして、紅
「あんな考えをしているからお母様は早く死んでしまったんだ……」
私のお母様は数年前に病気で他界している。
お母様はとても綺麗な人で、あんな節操なしなお父様には勿体無いくらい出来た人だった。
二人は恋愛結婚だと聞いたけど、あんな男の何処が良いか未だに分からない。
世の中にはもっといい人がいただろうに……。
私は廊下を進んで自室に戻ると、ベッドに飛び込むようにして倒れ込んだ。
すると、何処かで私の様子を見ていたかのように瀧澤が現れる。
「楊お嬢様、頬が赤くなっておられますがどうなさいましたか?」
「お父様に叩かれた。妄言を吐くお父様に嫌味を言ってやったからね」
「……まったく、お転婆でいらっしゃいますね」
瀧澤は苦笑いを浮かべながらも部屋の中にある冷凍庫から氷を出してタオルを巻くと、私の頬に当てる。
叩かれて熱を持った頬には凍った氷は気持ち良かった。
困ったように笑いながらも私を気遣ってくれる。
瀧澤のこういう所が好きだ。