雪と断罪とそして、紅


私は瀧澤から氷を受け取ると、自分で頬に押し当てる。





「……何故、お母様はお父様と結婚したのだろうな……」





無意識に出た言葉に、瀧澤は不思議そうな顔をする。





あの父親を好きになる要素が分からない。





良いのは家柄と容姿だけで、中身はプライドが高く、傍若無人。






そんなお父様の何処が──。






「好き──────じゃない」





「へ?」





ふと、瀧澤がポツリと何かを呟いた。






でも、はっきりとは聞き取れなかったし、瀧澤ももう一度言うことは無かった。





まあ、良いや。





それにしても──。





「瀧澤って何か誰かに似てる気がするんだが……」





瀧澤が私に仕えてもう四、五年が経つが、誰かに似ている気がして仕方がない。





「おや、誰でしょうか?思い出したら教えてくださいね」




私の問いに瀧澤ははぐらかすように背を向けると部屋から出ていった。






──それから数ヵ月後。






邉巳の業績が急激に悪化し、多額の負債を抱えて経営破綻した。






名家と言われた邉巳はたった数ヵ月で名家から没落してしまった……。






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