雪と断罪とそして、紅
こんな綺麗な蘭が似合うと言われたら嬉しいに決まってる。
特に好きな人から言われたら……。
「瀧澤」
「はい」
私と瀧澤はもう令嬢と使用人じゃない。
もう恋に落ちてはいけない関係ではない。
だったら、私は──。
「瀧澤、私は──」
すると、瀧澤の背後で何かが揺れていた。
三階のテラスから何かが吊るされ、ゆらゆらと揺れている。
ゆらゆらと揺れるそれは人の形をしている。
「旦那様!?」
私の様子に後ろを振り返った瀧澤がテラスに向かって叫んだことで、私はその揺れるそれがお父様なのだと理解する。
目の前の衝撃的な光景に、私は自分の意識が遠くなるのを感じた。
はらりと蘭の花が散ったのを最後に、私は意識を手放した。
──お父様は名家であれなくなったことを嘆き、首を吊って自ら命を絶った。
多額の負債を私一人に抱えさせて……。