雪と断罪とそして、紅
「あんた……何を……ッ!?」
血を吐き、喉を押さえながらうずくまって睨み付けてくる瀧澤を、私は冷たい目で見下ろした。
「何って復讐だが?」
私は嘲笑うかのように口角を持ち上げると顔に飛んできた瀧澤の血を舐めた。
「復讐って……」
「今、お前に飲ませた毒は男にしか効かない毒だ。だから、私が口に含んでも死なない」
呆然とする瀧澤の手に触れると、まるで人形遊びをするかのように曲げたり伸ばしたりする。
……曲がるはずのない方向に。
「ぎゃあああぁっ!」
曲がるはずのない方向に曲げたり伸ばしたりするものだから、瀧澤は痛みで絶叫する。
「お前も馬鹿な男だ。此処が何処かも知らずに私を売ったんだからな」
瀧澤の腕を曲げるのに飽き、次は指を同じように曲がるはずのない方へ一本ずつ曲げていく。
再び絶叫がするが、私はその絶叫が聞きたくて堪らない。
人の絶叫が気持ちいい。
「教えてあげる。此処は遊女屋だけど男が女が買う所じゃない。女が男で遊ぶ場所」
私は頬が緩むのを感じながら、瀧澤の最後の指を折り曲げた。
此処、切碕が経営している遊女屋は女が男で遊ぶ場所。
本人曰く、『男以上に非道なのは女。だから、遊ばせてみたら楽しいと思ってね』。
切碕にとって≪遊ぶ≫は殺人、切碕にとって人の命はおもちゃ同然だ。