雪と断罪とそして、紅
──目の前が深紅に染まった。
鉄臭い血の香りが全身を包み込む。
瀧澤を殺したときと同じだ。
でも、一つ違うのはその血の香りは自分の体からするもので、体から何かを引き摺り出される時にしたもの。
あぁ、私は……妾は死ぬんだ……。
……何故、蘭の香りがする?
蘭の花なんぞ妾は嫌いじゃ。
妾には似つかぬ美しく、清廉な良い花言葉しかない花だ。
なぁ、瀧澤。
そなたは何故、妾に蘭が似合うと言った?
蘭の花言葉を知っていて言ったのか?
今となってはどうでも良いがな。
なぁ、瀧澤。
妾は……私はそなたの妹……。
今からそなたの所に行く私を妹として受け入れてくれるか?
──いや、無理だな。
私が兄としてそなたを受け入れられない。
私は今でもそなたが好きだからな。
兄としてではなく、愛しい男として……。