雪と断罪とそして、紅


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「君、名前は?」




紅眼の麗人はあたしに缶のココアを差し出してきた。




自殺を止められたあたしは彼に促されるがまま、ビルの屋上にあるベンチに座っていた。





「玖下紀生……」



あたしはココアを受け取ると、ポツリと名前を口にする。





「紀生(キミ)ちゃんね。僕は名前がないから好きな風に呼んで」





名前がないってどういうことだろう?





聞こうとしたけど、彼は彼なりに事情がありそうだから聞かないで置こう。





「──で、紀生ちゃんは何で死のうとしてたの?」





自分の分のココアを片手にあたしの隣に座った彼はそう問うてきた。





「……あたし、高校でいじめにあってるんです。顔が気に入らないとか言われて……辛くて……」




ココアを握る手に自然と力がこもる。





「親は?」







「母がいますが、あたしには興味無くてお金のある男と遊び歩いてます」





父は物心ついた頃からいなかった。





母も1日分の食費を朝置いて出掛け、日付が変わる頃に知らない男を連れて帰ってくる。






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