雪と断罪とそして、紅
「今から君の名前は安倍明晴。良い働きを期待している」
名前が貰えた。
≪被験体2563≫ではなく、ちゃんと人としての名前を。
名前が貰えることは自分達にとってどれだけ幸せなことなのかは分かっている。
それなのに、全然幸せを感じない。
絶望しか感じない。
「ごめんなさい……」
目の前の血溜まりに倒れる骸に無意識に謝ると、肩を叩かれる。
「何、謝ることはない。この男は犯罪者、君はその犯罪者を裁くために産み出された存在。存在理由を示しただけなんだから」
白衣を着た研究員に肩を叩かれ、そんなことを言われる。
そう、私は犯罪者を裁くために産み出された存在。
実在した人物のDNAを最新科学により復元し、体に組み込まれた存在。
それが≪作られた人間≫、私達のことだった。