雪と断罪とそして、紅
「 本当に……?」
涙を拭いながら頭を傾げるアリスちゃんに、彼は優しい笑みを浮かべて頷いた。
「本当だよ。さぁ、四人でかくれんぼの続きをしようか」
「うん!」
いつの間にか、アリスちゃんは泣いていなくて笑顔を浮かべている。
かくれんぼの続きをするという彼らはそこから出ていこうとするが、赤目の彼だけは立ち止まって三月様の方を見た。
「……名前をくれたのが貴方じゃなくて良かったと思いますよ。この子が名前をくれたから僕は今笑えてる」
赤目の彼……ヒカリ君とやらはどうやらアリスちゃんに名付けられたらしい。
「風魔の彼ももしかしたら、僕と同じかもしれませんよ。……≪僕達≫は生まれてきたことを何よりも後悔している。出来ないことを認めてあげないと殻に閉じこもるだけです」
そう言い残して、彼は不思議そうな顔をするアリスちゃんを抱えて出ていった。
多分、彼は私が今終えた試験をこなせず、名前を貰えなかった。
それでも、彼には名前が与えられ、そのあとにその試験をこなすことが出来た。
アリスちゃんが≪ヒカリ≫という名前を与え、彼の存在を認めたから……。
「まったく、あのお転婆姫には心底驚かされるよ。誰に似たんだか……」
三月様は呆れたようにため息を吐きながら隣にいる智さんを見る。
「俺か!?」
「私は誰とも言っていないが、貴方が反応したならあの子が貴方に似てお転婆だと認めているのね」
「視線を向けられたら反応してしまうだろ!?」
そんな夫婦のやり取りを耳にしながら私は赤目の彼のことを考えていた。
──もしかしたら、私はこの時に囚われていたのかもしれない。
彼の……切碕ヒカリの赤い瞳に。