雪と断罪とそして、紅


「そう……。一人で辛かったね……」





彼は自分のことのように悲しい顔をすると、あたしの頭を撫でてくれる。






頭を撫でられたことなんか無い。





だから、頭を撫でられることがこんなに暖かいなんて知らなかった。





「顔の造形なんか人それぞれ。他人がどう言おうと紀生ちゃんは可愛い。気にしなくて大丈夫だよ」





彼は優しい笑顔を浮かべていた。





胸が暖かかった。





会って間もないのに、あたしは優しい彼に恋に落ちた。





「あの……あたしに貴方のことを教えてくれませんか……?」




あたしの言葉に、彼は一瞬驚いたような顔をした。





でも、彼は──。





「僕も紀生ちゃんを知りたい……」





そう言って、あたしを抱き締めた。





それからあたしと彼の距離が近くなるのに時間はかからなかった。





そして、彼と出会ってから半年が経った頃。






あたしは彼との間に子供が出来た──。





< 8 / 210 >

この作品をシェア

pagetop