雪と断罪とそして、紅
婚約者?
そういえば、藤邦の研究員の中に志岐五月という女性の研究員がいる。
確か、その人は三月様の実の妹だったはず……。
「そうやって、年上を馬鹿にするような──わっ!?」
躓いて転びそうになるアリス様を和真という少年が抱き止める。
「馬鹿になんかしてないよ。アリスは俺の可愛いお嫁さんなんだから」
和真という少年の言葉と共に抱き締められた彼女は最初は暴れていたものの、根負けしたように大人しくなる。
おやおや、仲睦まじいことだ。
ふと、隣からピリリと刺すような殺気を感じる。
視線を向ければ、赤目の彼が妬ましそうに仲睦まじい二人を見ている。
「あの、切碕さん?」
「何?」
「大丈夫ですか?」
殺気を放つ彼に何と声をかけたら良いか分からず、そんなことを問いかけてしまう。
そんな私の問いに彼は殺気を放つを止めると、クスリと笑った。
「大丈夫に見える?今の僕は色んな感情でごちゃごちゃなんだよね」
ごちゃごちゃと言いながらも赤目の彼は何処か楽しそうで、何処か悲しそうだ。