雪と断罪とそして、紅
「止めませんよ。むしろ、尊敬しますよ」
それは自然と口から発せられた偽りのない言葉だ。
彼の考えは歪んでいるかもしれないが、素晴らしい。
愛情が欲しいのに彼が望むのは憎しみ。
憎しみを向けられても彼女が己を見ているというだけで彼は幸せなのだろう。
作られた人間としてただ言われたことをこなしてきた私には到底考え付かないことだ。
「切碕さん……いえ、切碕様」
「様?」
様付けに怪訝そうな顔をする彼だけど、何処か満更でもない素振りを見せる。
「私を貴方様の下僕にしてくださいませんか?」
私はその場に膝をついて頭を垂れる。
誰かにこれ程仕えたいと感じたことはない。
私は彼に魅入ってしまった。
赤い瞳の鬼にような残虐な神に──。
その後、赤い瞳の神は最愛の少女の最愛の少年を殺し、私と共に行方を眩まし、女ばかりを殺す殺人鬼となった。
そして、数年後──。
彼女が再び愛した青年と共に身罷られてしまった──。