雪と断罪とそして、紅
呆然と立ち尽くしている僕の耳に更に姉さんと男の声が届く。
「それに、女の子の格好が好きな弟なんて嫌よ」
姉さん、じゃあ、何で僕にスカートをくれたの?
それって僕の趣味を理解してくれてたんじゃないの?
「女の子の格好が好きなのにあの子、虫なんか部屋に飼ってるのよ?あんな子が血の繋がった弟なんて無理だわ」
姉さんの言葉に、逆上せた頭を思い切り鈍器で殴られたような感覚がする。
「酷い姉ちゃんだな。まあ、そういうところも好きだけどな」
「私もようやく自由になれたわ。貴方と一緒にいられる」
人目も憚らず隣の男とキスする姉さんは僕の知ってる姉さんとは違った。
……姉さん、今の言葉は全て嘘だったんだね。
全てその男の傍にいるためだったんだね。
僕は利用されてただけなんだね。
僕は勘違いしてたんだね……。
僕はやって来たバスに乗り込んだ姉さんを見つめながら、頬に雨粒ではない滴が伝う感覚を感じた。
「姉さん……」
ポツリと名前を呟くと、体に打ち付けていた雨の感覚が無くなった。