雪と断罪とそして、紅
「酷いお姉さんだね」
傘を差し出していたのは両目の赤い日本人で、恐ろしく整った顔をした男だった。
観光客なのか背中にはバックパックを背負っていて、観光客には珍しく流暢な僕の母国語を話している。
それにしても何だろう?
この人の赤い瞳には引き込まれる。
「そうなんです……。僕の姉は酷い姉なんです……。利用するだけしたら、ポイって捨てるんです。実の弟でさえも」
赤い瞳は本音をさらけ出させる。
だから、僕は素直に思っていたことを口にする。
「それは酷いね……。君、そのお姉さんのこと……憎い?」
赤い瞳の男はこてんと頭を傾げながら僕に問う。
憎い?
あぁ、この胸の中で渦巻くどす黒い感情が憎しみだというなら……。
「憎い……です……」
「殺したいくらい?」
殺したいくらい?
あぁ、この胸の中で沸き上がる衝動が殺人願望なら……。
「殺したい……です……」
僕の言葉に、赤い瞳の男は楽しそうに口角を持ち上げ──。
「じゃあ、殺してしまおうか」
と残酷なことを口にした──。