Flower love
「到着ー」
フィルシアは一軒の家に止まる。
「……この家……」
レオは大きなその家を見つめた。
その家は2121年の時代にもあった、見知った家だった。
さすがに、2121年の家は今と比べて多少汚れてはいるがその原形は変わらない。
「……リンの家……か?」
「みたいだねー。ロウンさん、引っ越してからずっとここにいるみたいだ」
ロアはにやりと意味ありげな笑みを浮かべている。
「この家、あたしが紹介したの。あたし好みの家だけど、ラウルにも合うと思ったから」
フィルシアは優しく微笑み車から家を見上げる。
「じゃ、後は頑張って」
と、急にフィルシアはこう言い出した。
「一緒に来ないんですか」
「……行きたいけど、いないんでしょう? 2121年の世界にあたしは」
顔は笑顔のままだった。
だが、口調はどこか寂しげだ。
レオとロアは言葉を失くす。
「……いいの、分かってるから。自分のことだもの、自分がそんな長くないことぐらい分かるわ。だけどね、いざ自分がいない世界に行くのって結構勇気がいるのよ。その世界にもう自分は存在してないんだって思うと、怖くていられなくなっちゃうの。だから、あたしは自分が存在してる今を生きる」
「……それでいいのか?」
ロアは確かめるようにフィルシアに問う。
「ええ。あたし、ラウルを信じてるの。……ううん、ロウンを信じてるのよ。あたしの夫であり、リンちゃんの父親であるロウンを信じてる。だから、絶対に大丈夫」
「そう、でも……気が向いたら来なよ。その、君が信じてるロウンさんと話したいことも山程あるだろう」
ロアはそう言うと、車から降りた。