Flower love

レオもその後を追おうと扉に手をかける。

「……フィルシアさん、どうしてロウンさんがこの時代に来ないか分かりますか」

「……いいえ」

「それは、この時代でラウルさんが生きているからです。ロウンさんもあなたと同じように、過去の自分を信じているんですよ。だから、きっともうこの時代には来ないでしょう。この時代は、ロウンさんにとってただの想い出です。だけど、同時にずっとあなたを想っています。きっと、それはこれからもずっと変わりません」

フィルシアは片眉を器用に吊り上げて、バッグミラーでレオを見つめる。

「何が言いたいの?」

「……あなたを想ってずっと生きていくロウンさんの思い出を、少し蘇らせてあげたいと思っただけです」

レオは苦笑しながらこう言い、車から降りた。

フィルシアはくすっと微笑む。

「……そうね」

本当は、ずっと前からラウルが好きだった。

幼稚園の頃からずっと一緒にいたラウルを。

いつも優しく声をかけてくれるラウルを。

自分のことは直ぐに犠牲にして、他人を一番に思うラウルを。

本当は、ずっと……。
< 152 / 208 >

この作品をシェア

pagetop