Flower love
レオもその後を追おうと扉に手をかける。
「……フィルシアさん、どうしてロウンさんがこの時代に来ないか分かりますか」
「……いいえ」
「それは、この時代でラウルさんが生きているからです。ロウンさんもあなたと同じように、過去の自分を信じているんですよ。だから、きっともうこの時代には来ないでしょう。この時代は、ロウンさんにとってただの想い出です。だけど、同時にずっとあなたを想っています。きっと、それはこれからもずっと変わりません」
フィルシアは片眉を器用に吊り上げて、バッグミラーでレオを見つめる。
「何が言いたいの?」
「……あなたを想ってずっと生きていくロウンさんの思い出を、少し蘇らせてあげたいと思っただけです」
レオは苦笑しながらこう言い、車から降りた。
フィルシアはくすっと微笑む。
「……そうね」
本当は、ずっと前からラウルが好きだった。
幼稚園の頃からずっと一緒にいたラウルを。
いつも優しく声をかけてくれるラウルを。
自分のことは直ぐに犠牲にして、他人を一番に思うラウルを。
本当は、ずっと……。