Flower love
「……っ」
気がつけば、涙が溢れていた。
本当はずっと好きだった。
ラウルをずっと愛していた。
だけど、自分の病気を知ったときにそんな感情、持っていたって無意味だと感じた。
自分がいなくなっても、愛した人には笑顔でいてほしい。
それが例え自分じゃなくて他の誰かを愛したとしても、ラウルが笑顔ならそれで良かった。
なのに……どうしてあたしなの……?
もう諦めようとしてたのに。
「ど……して……よ」
フィルシアは涙を拭い続けた。
病気になんてなりたくなかった。
普通の家庭を持って、普通に幸せに暮らしていたかった。
なのに、病気は自分を選んだのだ。
怖い。
フィルシアはそう思った。
死ぬのが怖い。
何度思ったか分からない。
苦しくて、痛くて……それでも心配性のラウルの前では笑顔でいた。
本当は怖くて怖くてたまらないのだ。
フィルシアは下唇を噛み締めて、歪む視界で車を出した。
こんな涙でぐちゃぐちゃな顔を、ラウルに見られたくない。
フィルシアはラウルの家から逃げるように離れて行った。