「其の花の、真白に咲く」〜麗しの執事と令嬢の秘恋〜
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……庭に咲く薔薇を、ガゼボ(東屋)から頬づえをついて眺めていた。
「…お嬢様、何を見ておいでだったのですか?」
傍らのリュートが紅茶を注ぎ入れながら、尋ねてくる。
「…薔薇よ」
言うと、
「薔薇ですか、今年も美しく咲きましたね…」
と、リュートが微笑を浮かべた。
「ええ、そうね…でも、ここの薔薇はもうすぐ私には見られなくなるんだわ…」
呟いて、
「……キースの城にも、薔薇が咲いていたの。思い出すのかしらね……薔薇を見る度に、ここを……」
紅茶を一口含んだ。