ありふれた恋。
どんな男性が好きかと聞かれたら答えはひとつしかない。
正確には好きなタイプなどなくて、私は陽介という人間そのものが好きなのだ。
「私のこと、ちゃんと愛してくれる人」
自分でも笑ってしまうほど、馬鹿な答えだと思う。
「よく言うじゃん。愛すのと、愛されるの、どちらが良いかって」
「うん」
「私は愛されたいんだ」
「おかしい」
「え?」
ちょうど信号が赤になり、足を止めて陽介は言う。
「恋愛って、愛して愛されるもんじゃねぇの?どちらか一方が好きだったら、片思いと同じだろ?」
「…陽介には分からないよ」
「はっ?」
つい口が滑った。
「俺には分からない、って?」
「……陽介は、ちゃんと愛されているから分からないんだよ」
居心地の悪さを感じ、早く信号が青になって欲しいと願う。
立ち止まったままだと、ずっと陽介の視線がこちらに注がれている。
強い視線に、声が震えた。
「私は誰からも愛されてないの。親にもね」
なぜこんなマイナスイメージになるようは発言をしているのだろう。陽介に話すことじゃないのに。
「だから愛されたい」