ありふれた恋。
校門をくぐっても、教室には向かわなかった。
今更、優等生になるつもりはない。
屋上へと続く階段を駆け上がる。
先程の香水が、まだ私の鼻孔をくすぐっていた。
「最悪」
なにも悪くない彼女のことを嫌悪の対象にしてしまいたくなる、そんな弱い自分は最低のクズだ。
「なにが最悪だって?」
「いたんだ」
階段の踊り場で、堂々と寝転がる男。
「屋上は日差しが強すぎるんだよ」
「だからって、ここにいるのは変だよ」
「そんなの俺の勝手じゃーんっ」
明るい茶色の髪を揺らしながら、祐太郎(ゆうたろう)は笑った。
「おまえも立ってないで、座れば?どーせ、サボるんだろ」
「うん」
祐太郎の隣りに座る。
スカート越しに、床の冷たさが伝わってきた。
「おめでとー」
ん?
祐太郎は勢いよく起き上がると、私にコンビニの袋を投げつけた。