ありふれた恋。
「頑張れって、言って欲しかった?俺だって励ましてやりたいけど、今のおまえに頑張れだなんて重荷になるだけだろう」
「祐太郎……」
「とりあえず、距離を置いてみな。そうすれば分かるさ。おまえにとって、陽介さんの存在がどれだけ大きいかを」
「よく意味が分からないよ」
「陽介さんに会えないことに、おまえが耐えきれたらそれでおしまい」
耐えきれる、耐えきれない、
そんな問題じゃない。
耐えなければいけないのだ。
私に選択肢はひとつしかない。
「でも俺には分かるよ?」
祐太郎は右耳に付けられたピアスをもてあそびながら、意地悪く言う。
「おまえは陽介さんがいない生活に耐えられない。そしたら告白でもなんでもして陽介さんを振り向かせれば良いだけの話しだろーが」
「陽介が私なんかに、振り向くはずがないよ」
「どーだろうな」
祐太郎はもう話をする気は無いようで、さっと立ち上がり2段飛ばしで階段を下りて行った。
気まぐれなのはいつものこと。
残された私は、携帯の電源を切った。
陽介とは会わない。
その決意が揺らがぬように連絡手段を無くす。
陽介と会えないということが私にとってどれくらい痛いことなのか、自分が一番よく分かっている。だからといっていつか来る別れを先延ばしにするつもりはもうない。
今日を逃したら、私はまた陽介に依存し続けるだろうから。
私の中に積もり、いっぱいになってしまった恋心はたぶんこれからも消えて無くなることはないけれど、陽介を愛してた証だと思えば誇らしいものに感じられる。