ありふれた恋。
サヨナラと、離れがたい心。
それからーー2ヶ月、陽介と会っていない。
毎晩のように祐太郎と遅くまでバカ騒ぎをした。
今日はカラオケで、夜通し歌う予定だ。
「おまえ最近、陽介さんに会ってないんだ?」
「あの誕生日以来、会ってなーい」
わざとふざけた口調で告げる。
私らしくない。
「我慢できてるなー」
コーラを飲みながら、祐太郎は次の曲を選択するため機械を操作する。
「そろそろ限界なんじゃない?」
「まさかっ」
祐太郎には本心を見透かされているのだと思うけれど、今は強がりしか言えない。
弱音を吐けば陽介に会いたい気持ちが溢れ出てしまうだろう。
「いや、おまえじゃなくて。陽介さんが限界なのかもよ」
「陽介はなんとも思ってないよ」
あれから怖くて、携帯の電源を入れてない。
元から陽介と祐太郎以外に連絡をとる相手もいないので、そこまで不便ではない。
陽介からメールや電話が入っていないことは分かっている。淡い期待は抱いていない。
「じゃ、もう永遠にお別れだな」
「……」
祐太郎は私の返事を待たず、歌い始めた。
街中でも耳にする人気グループの新曲のようだが、もう頭に入ってこなかった。
永遠にお別れだな、
心の中でそう思っているより、誰かの口を通して再確認する方が、ーー痛い。
リアルに響いた「別れ」という言葉に、
否定したい気持ちが生まれる。
私が弱い証拠だ。
別れを決めたはずが、いつまでも前に進めない。
私はなにひとつ変われていない。
陽介のいない日常を送ることに、
違和感を覚えない日は、
恐らく、ーーこないだろう。