ありふれた恋。
歌い続ける祐太郎に断りを入れて、先に店を後にした。
祐太郎の側は心地いい。
余計な気を遣わなくてもいいし、涙を隠さずに済む。
自転車を引き取るため、駐輪場まで足を運ぶ。ポケットから自転車の鍵を取りだそうとして、手を止めた。
目の前に大きな影ができる。
「なんで……」
チャリン、と鍵が落ちた音がしたが拾う余裕はない。
「祐太郎に聞いた。ここにいればおまえに会えるって」
久しぶりに見る陽介は、ちっとも変わっていなかった。
カッコよく決まっている髪型も、服装も、
低い声も、眉間に刻まれたシワも、
なに一つ変わらず、私の好きな陽介のままだった。