ありふれた恋。
「何の用?」
本当はこんなことを言いたいんじゃないのに。
どうして会いに来てくれたのか、その理由が知りたい。
「おまえの誕生日の夜、飯を食う約束しただろうが。忘れたのか?」
「うん、忘れた」
可愛いげのない女。
「ムカつく」
もう完全に嫌われたかな。遂に見放される……?
ため息をついた陽介はこちらに歩いてくると、鍵を拾ってくれた。
それを受け取ろうとして手を伸ばす。
「もう、いい」
ポツリと呟いた陽介は鍵を投げ捨て、私の手を引いた。
突然のことに戸惑い、気付いた時には
陽介の胸に顔をぶつけていた。
「俺の好きなようにさせてもらう」
「陽介……?」
「おまえの意思なんて尊重してやんねぇよ」
見上げれば、無表情の陽介と視線が絡む。