ありふれた恋。
「いなくなった理由を聞きたい」
私を解放せずに陽介は、低い低い声で問うた。
「理由なんてないよ。それにいなくなったっていう言い方は変だよ。だって私たちは家族でなければ友達でもない。一緒にいる必要はないんだよ?」
小さな声でも十分、伝わる距離。
動揺を隠すことで精一杯。
「一緒にいる理由なんて、作ればいいだろうが」
陽介の言葉は意外なもので、その意味を理解することに時間を要した。
「それって、まだ側にいても良いってこと?」
「ああ?駄目なんて一言も言ってないだろうが。おまえが勝手に離れただけだろ」
「突き放されるよりも、自分から離れた方が……」
「そうやっておまえは楽な道を選んだわけか」
容赦のない言葉が降り注ぐ。