ありふれた恋。
「だって、」
言い訳することなら沢山あるけれど、それを上手く言葉にできない。
一緒にいても不安で、楽しい時間でさえマイナスなことを考えている私の気持ちを陽介には伝えられないし、同じように感じて貰うことは不可能。
「俺たち、」
いつまでも口を開かない私に呆れたのか、陽介はため息をついた。
「これで終わりなわけ?」
胸が痛い。
「……」
「おまえが嫌だと言うんなら、俺はもう近付かないよ。もしまた気が向いたら、遠慮なくうちに来い」
素早い動作で私を解放すると、陽介は背を向けた。
強引に引き寄せたくせに、最後はあっさりしていた。
本当は置いて行かれたくないのに、呼び止める言葉が見つからなくて投げ捨てられた鍵を拾うためにしゃがみこんだ。
そのまま立ち上がることを拒絶した身体は、地面に腰を下ろす。
地面を見つめ、頭を抱える。
「おい、そんなとこに座り込んでたら迷惑だろうが」
陽介が戻って来たーー
私にいつまでも構うのは、陽介の優しさなのだろうか。