ありふれた恋。
「ていうか、俺たちの関係は確かな"愛"で繋がっていたと思うけど」
「……愛なんて、知らないよ」
陽介に優しくされている実感はあっても、愛されているとは思えなかった。
「"愛"、って言ったって色々なものがあるから、俺もよく分からないよ。ただ祐太郎がおまえに向けている想いだって、愛情のひとつじゃねぇの?」
陽介がこんなに沢山、語ってくれたのは初めてで、とても新鮮。
祐太郎とは「友情」で結ばれていると思うけれど、その友情の成分には愛情も含まれていたのだと、言われて気がついた。
愛される愛されないの問題はなにも、恋愛だけに絡んでいるわけじゃなく、友達を大切に思うその気持ちこそが、愛情なのか。
そんなの、誰も教えてくれなかった。
「陽介……」
「送ってく」
「うん」
「自転車、とってくれば」
「待ってて!」
鍵を握り締め、急いで自転車を取りに走った。