ありふれた恋。

「ていうか、俺たちの関係は確かな"愛"で繋がっていたと思うけど」

「……愛なんて、知らないよ」


陽介に優しくされている実感はあっても、愛されているとは思えなかった。


「"愛"、って言ったって色々なものがあるから、俺もよく分からないよ。ただ祐太郎がおまえに向けている想いだって、愛情のひとつじゃねぇの?」


陽介がこんなに沢山、語ってくれたのは初めてで、とても新鮮。

祐太郎とは「友情」で結ばれていると思うけれど、その友情の成分には愛情も含まれていたのだと、言われて気がついた。


愛される愛されないの問題はなにも、恋愛だけに絡んでいるわけじゃなく、友達を大切に思うその気持ちこそが、愛情なのか。


そんなの、誰も教えてくれなかった。


「陽介……」

「送ってく」

「うん」

「自転車、とってくれば」

「待ってて!」



鍵を握り締め、急いで自転車を取りに走った。


< 38 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop