ありふれた恋。
「大人になるためには、自立が必要なんだよ」
「自立?」
「俺はまだおまえから自立してないから、ガキってわけだ」
それじゃあ一生、私から自立しないで。
そんな言葉を吐いたら、この人はどうするだろうか。
答えは予想できる。
いつものように涼しい顔をして受け流すに違いない。
「自立したい?」
私から、離れたい?解放されたい?
「今はまだ良い。大学生だしな」
"今は、"なんだ。
そう遠くない将来、陽介が私から離れていくと遠まわしに宣言されたようなものだ。
「ケーキ食う?」
「うん」
無理矢理に笑顔を作りケーキのことだけを考える。
泣いてしまったら、たぶん終わり。
涙を見せた瞬間、私たちの関係が終わってしまうという不安が募る。
出会った頃からずっと泣いたら駄目だと言い聞かせてきた。
だって私たちはお互いが笑顔でいられるように、側にいるのに。
陽介の側にいることで私が泣いてしまったら、
一緒にいる意味がなくなってしまう。
もう少し側にいたいから、
だから私は今日も涙を隠す。