ありふれた恋。
「陽介」
2人掛けのテーブルでノートや資料を広げ、なにやら熱心に書物を読んでいる陽介に声を掛ける。
「ああ、久しぶり」
「うん、久しぶりだね」
陽介と向かい合うかたちで座るが、目を見れない。広げられたノートの文字を追うも頭に入ってこなかった。
久しぶりというのは、あの映画館以来、
陽介に会っていないからだ。
「最近訪ねて来なかったから、また離れたのかと思った」
図書館だということもあり、小声で話す。
「ちょっと忙しかっただけ」
荷造りやいらないものの整理で忙しい日々であったことは事実で、なるべく母と食事をすることにしていた。
「母とね、上手くいくようになったよ。まだぎこちないんだけど」
最近は少しずつ、親子のような会話ができている。ちょっとだけ進歩したかな。