幼馴染の 愛でられ姫
『 藤堂様が いらっしゃいました 』
受付からの内線で 伊織は ジュエリーの並ぶ
フロアに足を進める。
『 藤堂社長 ようこそ いらっしゃいました
本日は 宜しくお願い致します』
丁寧な挨拶を交わし ジュエリーをじっくりと
視察する藤堂社長。
『……どれも 素敵な作品だね 』
『恐れ入ります』
『なんでも 伊織くんが デザインしている
品もあると伺ったが……』
『はい。 桜をモチーフにしたデザインは
私の作品です』
『経営のみ ならず マルチに活躍していて
実に素晴らしい!』
『恐縮です』
『伊織くん、実はね 兼ねてより 君にお願いしていた 縁談の件なんだが…』
『っっ!!?』
美桜は どんどん顔色が悪くなり 不安気に
伊織を見つめていた。
(伊織…… なんて応えるの?
泣きそう──────)
『藤堂社長、そのお話は 以前お断りしたはずです』
『いるんだろぅ?香 』
藤堂社長が 娘を呼ぶように叫ぶ
『お父様……』
側にいた様で 藤堂秘書が 近づいてくる
『伊織くん 君にふさわしい相手は 香 だ
手前味噌だが 香は 優秀だ。ずっと君に焦がれて 御社を 受けて 合格してみせた それじゃ不満か???』
『勿体無いお話しですが……』
『だろう?だったら 婚約者として
宜しく頼むよ』
『伊織様……』
秘書は 今まで見せた事のないような上目遣いで
伊織を見つめている。
美桜は、耐えられなかった。
足が震えて その場に 立っているのが
やっとだった。
( 美桜、そんな顔するな くそっ!)
『藤堂秘書、今まで君は秘書としてよくやってくれた。だが、これからは 不要だ 』
『伊織様!私は ずっと 、ずっと お慕いしておりました。貴方に相応しくなるべく 日々勉強して、貴方に並べるようにと 自分を磨いてまいりましたのに、なのに、なのに!!! 』
目には 狂気がやどっている
(??? どこを見て…… )
美桜が 恐怖で震え出す
カタカタカタカタ────────────
(美桜!!?)伊織が目を向けた時には
ぱ────────ん!
美桜が平手打ちされていた。