伯爵令妹の恋は憂鬱
そして今、フリードを前にトマスは怯むこともなく顔を上げて、伝えてくれようとしている。
「本当は、直ぐするべきなのかもしれませんが、俺……私は、やはり式にはフリード様やエミーリア様に来てほしいんです。綺麗なマルティナを見せたいので。恥ずかしながらそれを今すぐ叶えるのは、私には難しいんです」
「マルティナはそれでいいの?」
エミーリアが心配そうに問いかける。マルティナは、つながれたトマスの手を自分からもギュッと握ってほほ笑んだ。
「……トマスと話し合って決めたんです。私も豪華なお式なんてしなくてもいいけど、お兄様やお姉さまには来てほしいって」
「……俺はふたりがあなたのことをどれだけ心配していたか知っています。そのお二人からあなたをいただくんですから、きちんとした式を見せて安心してもらうのが俺の務めだと思うんですよ」
フリードはじっとトマスを見つめると、口元を緩めた。
「それには人から借りた金じゃ駄目だというんだな?」
「はい」
「……だ、そうだ。俺にはトマスの気持ちもわからないでもない。女性陣は知らんがな」
そしてフリードはエミーリアを見やる。エミーリアは唇を尖らせて、「マルティナがいいならいいわよ、私は」と視線を送る。マルティナにみんなの視線が集まり、恥ずかしいような気持になりながら、たどたどしく言葉を続ける。
「早くそうできるように、私も頑張ります」
「なので、そういう前提で一緒に暮らす許可をいただきに参りました」
トマスが続けて、改めてフリードに頭を下げる。