伯爵令妹の恋は憂鬱
「アンネマリー様はハキハキして可愛らしいから、きっと来年の社交期を待ちかねているお方がおられます」
「やだ。そうだといいけど。地方の一子爵家なんて家柄としては大したことないもの。あーあ、きれいに生まれたかったなぁ」
「十分可愛らしいですわ。……さあ、そろそろ行きましょうか。マルティナ様」
ローゼがマルティナを追い立てるようにふたりの前から逃げようとするも、今度は男のほうが寄ってきた。
「待って。ちゃんとした自己紹介がまだだよ。僕はミフェル=アンドロシュ。こっちはアンネマリー。僕らは双子なんだ」
「えっ、双子……?」
マルティナは双子を見るのは初めてで、驚きのあまりまじまじとふたりを見てしまった。
「失礼しました。私、マルティナ=クレムラートです」
ローゼは先ほどちゃんと名乗ったので、マルティナだけが自己紹介をしたら、ミフェルはますます食いついてくる。
「クレムラート家のご令嬢かい? もしかしてフリード様がかわいがって外にも出さないって噂されている妹君かな? ねぇ、別荘地に来ているの? リタ様がご存命の時は、僕たち、お茶会に呼ばれたりしていたんだよ」
「おばあさまが?」