チーム『KTSM』へ ようこそっ!!


いつもの空き地に、今日は誰も居ない。



「今日はみんな大会に来てたから、やっぱりこっちには居ないな」



ふっと笑ったケイくんは、近くに落ちていたボールを拾い、バウンドさせる。



「なぁ七瀬。 お前さ、俺のこと『馬鹿だなぁ』って思う?」

「え? どうして?」

「高2でアメリカ行って『頂点を目指す』とか言って、そのくせストバスの大会で優勝も出来ない。
馬鹿な夢に踊らされてる男。つまりは馬鹿男だろ?」



ボールを構え、シュートを放つ。

シュパッという綺麗な音と共に、ボールはゴールへと吸い込まれ、地面へと落ちる。

それを見届けたケイくんが、私を見て微笑む。



「……私は、馬鹿な夢なんかじゃなくて、凄いことだと思ったよ。
確かに大会では優勝出来なかったし、アメリカでの生活が、どんな風になるかはわからない。
だけど……人生に無駄なことなんてないと思うの」



私はただ漠然と毎日を生きているけれど、ケイくんは凄い夢を持っていて、それを実現しようとしている。



「バスケのために努力してきた時間は、決して無駄じゃない。
バスケ部は廃部になってしまったけれど、逆に言えば、それがあったからストバスに出会えた。
そしてケイくんは明日、アメリカに行く……。
色々なものが重なって出来た道が“今”なんだよ。 今この瞬間に、無駄なものなんてないでしょ?」

「……うん」

「だからケイくんがアメリカに行くことは、ケイくんが頑張ってきた結果だと思う。
馬鹿な夢なんかじゃないよ。 これはケイくんが目指してきたものへの、第一歩なんだよ」


< 45 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop