略奪連鎖
***
 数日が過ぎ、ふと、最近孝之に抱かれていないことに気付いた。

 とはいえ10日程度の空白でしかないし、夫婦になったのだから回数が減るのは自然の摂理なのかもしれない。たとえこれまで週に二度は求められていたとしても……これは普通のことなんだ。

 言い聞かせたものの心は簡単に納得してくれない。

 一度疑心が芽生えると何もかもが不自然に見え、全てを疑いたくなるらしい。

 その夜、思い切って私から孝之に身体を寄せた。頬に口付け、ついばむようにキスをし、彼の身体に跨った私は自らパジャマのボタンに指をかけた。

 すると孝之の手が伸び、肩から大きくはだけたパジャマを私に着せかける。

「ごめん、塔子。今日は眠くて」

「……したくないってこと?」

「そうじゃないよ」

 そうじゃないなら、なに。

 口をついて出掛かった言葉を喉の奥に押し込んだ。それ以上私が何かを言えば険悪な空気になりそうだったからだ。

 わかった、と彼に跨ったまま言った。

 虚しかったし、悲しかった。セックスを拒否されることは胸に引っかき傷をいれられたようでもあった。

 翌日も、その翌日も、孝之が私を抱くことはなかった。

 私もトラウマになっているようだ。また「ごめん」と拒否されたら立ち直れない。彼にキスすることさえも臆するようになった。
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