略奪連鎖
 そのまま半年が過ぎた。

 もうセックスレスと充分に呼べるほど、彼から触れられていない。

 今夜こそは、と期待してベッドに入っても何事もなく孝之は眠り、その隣で私は寂しさに涙が溢れることもあった。

 けれど孝之の優しさは以前と何も変わらなかった。

 私の手料理を口にした後は必ず「美味しかったよ。ごちそうさま」と笑顔で言ってくれるし、洗濯物を畳んでいれば何も言わず一緒に畳んでくれる。

 トイレ掃除だってお風呂掃除だって「たまには手伝ってよ」そんな不満めいた台詞を一度も口にしたことはない。

 たかがセックスくらい、と私のほうが割り切るべきだと頭では思うのにいつも虚しさが同居しているようだった。

 考えたくないのに、意に反してたまに脳裏を掠めるのは、半年前、孝之が出社していなかったのはどういうことだったのか。というあの一件だ。

 そこを辿っていけば、行き着く先は他に誰かいるんじゃないかという思い。

 まさか孝之に限って……。

 けれど私の予感が的中したのは結婚4年目の記念日だった。
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