略奪連鎖
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 気付けば離婚から1年が過ぎていた。

 聞いた話によると、孝之は3ヵ月ほど前に再婚したらしい。

 相手は冴島 佳奈美だそうだ。

 ようやく孝之の妻になることができ、彼女はきっと幸せな日々を過ごしているのだろう。

 私も妻だった頃は毎日が嘘みたいに幸せだったし、孝之は本当に優しくて如才ない夫だった。孝之ほど優しい男はいないと未だに思う。

 私はと言えば実家に一旦戻ったものの、いつまでも腐った生活を送るわけにはいかず、職歴を活かしホテル業に戻った。

 以前勤務していたハイクラスホテルではなく、駅近くのビジネスホテルに再就職した。

 仕事はそれなりに大変だったけれど利用客の大半はただ寝泊まりするだけだ。受付業務と電話対応、あとはちょっとした雑務、それが私に与えられた業務だった。

 職場からほど近い場所にワンルームマンションを借り、私は今そこで暮らしている。

 実家暮らしは何かと両親が口うるさく居心地が悪かった。

 一人は寂しいけれど、一人のほうがましだと思えるほどだった。

 32歳の誕生日、私は仕事帰りにデパ地下に立ち寄った。

 ローストビーフ、白身魚のポワレ、ほうれん草のキッシュ、オーガニック野菜のサラダ、そして飲みやすいスパークリングワインを一本購入した。
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