略奪連鎖
「……すみません。ダイエットを頑張り過ぎてしまいました」

「ダイエット? 神崎さん、ダイエットが必要なほど太ってないでしょ」

 そう言って、毛布を掛け直してくれた孝之は「少し落ち着いたら今日は帰っていいよ。ちゃんとご飯食べてね」とスツールから立ち上がった。

 私の情緒はかなり不安定だったのだろう。

 予兆なく涙が込み上げ、声を詰まらせてしまった。え、と驚いた孝之がベッドに横たわる私を覗き込んだ。

「どうしたの。まだ調子が悪いなら病院に―――」

 なぜ上司相手にそんなことをしたのか自分でも信じられなかった。

 両腕を伸ばし孝之に抱きついた私は「すみません、すみません」と洟を啜り、しゃくり上げながら何度も謝罪した。

 けれど孝之は私を引き離そうとはせず「大丈夫だよ」と囁いて、私の背中を大きな手のひらで何度もさすってくれていた。
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