略奪連鎖
違和感を覚え始めたのは、結婚から3年が過ぎた頃だった。
孝之は何も変わらず優しく穏やかで非の打ち所がない夫だ。けれどその日、夜勤だと夕方4時過ぎに仕事へと出掛けた孝之は出社していなかった。
家に置き忘れた仕事用の手帳に気付き、すぐさま携帯に電話したけれど、コールが鳴るだけで繋がらない。しばらく待ってみたものの折り返しの連絡もない。以前、手帳を忘れて出掛けたとき、仕事を抜け出し取りに戻って来たことがあった。
「これがないと仕事にならないんだ」そう言って。
孝之にとっては重要な仕事道具。それを知っていたから私は心配になり、古巣であるホテルに電話した。
しかし「相坂マネージャーは今日はお休みですよ」とかつての同僚に告げられた。
どういうこと。
頭が白濁し、後頭部がじんと痺れた。
もう一度孝之に電話したけれど繋がらない。するとしばらくしてからメールが届いた。
『ごめん。クロークがバタバタしてて。どうした?』
宿泊客が多い日は確かにクロークはごった返す。でも。
―――出社していない孝之がなぜそれを把握しているの?
孝之は何も変わらず優しく穏やかで非の打ち所がない夫だ。けれどその日、夜勤だと夕方4時過ぎに仕事へと出掛けた孝之は出社していなかった。
家に置き忘れた仕事用の手帳に気付き、すぐさま携帯に電話したけれど、コールが鳴るだけで繋がらない。しばらく待ってみたものの折り返しの連絡もない。以前、手帳を忘れて出掛けたとき、仕事を抜け出し取りに戻って来たことがあった。
「これがないと仕事にならないんだ」そう言って。
孝之にとっては重要な仕事道具。それを知っていたから私は心配になり、古巣であるホテルに電話した。
しかし「相坂マネージャーは今日はお休みですよ」とかつての同僚に告げられた。
どういうこと。
頭が白濁し、後頭部がじんと痺れた。
もう一度孝之に電話したけれど繋がらない。するとしばらくしてからメールが届いた。
『ごめん。クロークがバタバタしてて。どうした?』
宿泊客が多い日は確かにクロークはごった返す。でも。
―――出社していない孝之がなぜそれを把握しているの?