ワンダーランドと雪白姫(童話集)
ワンダーランド
【ワンダーランド】
ピアノのお稽古をさぼって、先生に見つからないよう、町はずれの森に隠れているときのことだった。
懐中時計を持ったモグラが「時間がない、遅れてしまう!」と慌てた様子でわたしの横を走り抜けて行ったから、後を追った。
もしかしたら彼の行き先は不思議の国で、薬を飲んで背が縮んだり、喋る猫や帽子職人に出会ったりするかもしれない。
期待に胸を膨らませて走っていると、モグラが穴に飛び込むのが見えた。
それに続いてわたしもそのモグラ穴に足を突っ込んだけれど、爪先しか入らなかった。
そりゃそうだろうと肩を落とした。
(おわり)
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