ワンダーランドと雪白姫(童話集)
トラッシーの金色に輝く髪と白い肌は、漆黒のドレスによく映え、誰もが目を奪われました。スピーチも、豊かな表現力と美しい言葉使いで、とても素晴らしいものでしたので、トラッシーが壇上から下りても、しばらくは拍手が鳴りやみませんでした。
トラッシーの元には何人もの王子が代わる代わるやって来て求婚しました。
それを見た継母と義姉は、自分たちも王子たちに求婚されようとその輪に加わりました。しかし髪は乱れ、ドレスはほこりまみれだったので、王子たちは見向きもしませんでした。
落ち込む継母や義母たちの姿を気にかけたトラッシーが手を差し伸べましたが、継母たちはその手を払ってしまいました。
トラッシーはひどく心を痛め、また大粒の涙を流したのです。
その涙に引き寄せられるように先ほどの魔女と、友人だという灰かぶり姫御用達の魔女が現れ、継母たちを魔法でアライグマに変えてしまいました。
次の日からトラッシーと、アライグマに変えられた継母たちは、協力してせっせと屋敷の掃除をし、ごみ屋敷は見違えるように綺麗になりました。
トラッシーは蘇った屋敷を見て安心し、受賞式で知り合った王子様と結婚し、たくさんの子どもを作り、数え切れないくらいの物語を書いて、とても幸せに暮らしました。
お姫様になったあとも、トラッシーは屋敷へ足しげく通い、床や壁をぴかぴかに磨いていたため、屋敷がごみに埋もれることはなく、国一番の美しい屋敷として名を馳せました。
お姫様という立場となっても自ら進んで掃除をし、屋敷を美しく保ち続けたトラッシーは、親しみを込めて「お掃除姫」と呼ばれ、後世人々に愛されました。
(おわり)