ワンダーランドと雪白姫(童話集)
本当はフーリィも舞踏会に行きたいのです。
憧れのお姫様たちのように、素敵な王子様と出会って、幸せになりたいと思っていました。
でもそのためには早くお屋敷の掃除を終わらせ、掃除で汚れた身体を洗い、遥か遠くに見えるお城まで走って行かなくてはなりません。
ただし、フーリィは舞踏会に着て行くようなドレスは持っていません。継母たちが捨てた洋服を何枚も使って作ったつぎはぎだらけのドレスしかありませんでした。
掃除を終わらせ、身体の汚れをきれいに洗い流したあと、ためしにそのドレスを着てみましたが、いろいろな洋服を使って作ったつぎはぎだらけのドレスでは、継母たちの美しいドレス姿にはかないません。
姿見に映る自分の姿を見て大きなため息をつき、おとなしく舞踏会はあきらめようとドレスを脱ごうとした、そのときでした。
ひとりの老女が、音もなく、部屋に入って来たのです。
銀色の長い髪に、かぎ鼻、黒いローブをまとった老女は、どこからどう見ても魔女のようでした。
「私は魔女です」
老女が名乗ります。
フーリィはそれを聞いて飛び跳ねました。憧れのお姫様たちと同様、自分の元にも魔女がやって来たのです。
「もしかしてあなたは、灰かぶり姫やお掃除姫に魔法をかけた魔女様ですか?」
しかし魔女は長い銀髪を揺らしながら首を横に振ります。
「残念ながら違います。所属している組合が違うのです」
「魔女様にも組合があるのですね?」
「星の数ほどあります。ですがあなたの望みを叶えることは造作もありません」
魔女の言葉に、フーリィは大喜びしました。これでフーリィも、憧れのお姫様たちのように、お城の舞踏会に行き、素敵な王子様と踊ることができるのです。
「それでは魔法をかけます。洋服をドレスに、そこの壁にいる蜘蛛を馬に、バケツを馬車に、カカシを従者に変えましょう」