片想いウイルス(短編集)


「そういえば二階堂から何かもらうの初めてだね」

 包装紙を丁寧に外しながら言うと、一枚目のお煎餅を食べきった二階堂が首を傾げる。

「そうだっけ?」

「そうだよ。出張土産も滅多に買って来ないし、たまに買って来てテーブルに広げても、すぐになくなっちゃうから」

「ちゃんと個数見て買ってるのに。みんな何個も持って行ってんのか……」

「他の部署の子たちももらいに来てるから」

「そういうことが起きるから土産買って来ねぇんだよ」

「二階堂人気者だからねぇ」

「別に好きでこうなったんじゃねぇけどな」


 確かにそうかもしれない。顔が良くて仕事ができる云々の前に、二階堂は面倒見が良くて情に厚い良いやつだ。だから男女問わず人気者で、食事や飲み会の誘いも多い。今日みたいにイベントごとがあるとみんなに囲まれる。休日返上でみんなの悩みを聞いたりもしているらしい。

 ただでさえ出張が多くて忙しない部署なのに、仕事外でも忙しないなんて。


 多分その忙しなさに気付いているのはわたしだけだ。ここは同期として、盛大に労ってあげなくては。


「二階堂、何か欲しいものとかあったら言ってね」

「はぁ?」

「高すぎるものは無理だけど、できるだけ用意して、お姉さんがプレゼントしてあげよう」

「同い年だろうが」

「まあまあ。何でもいいから。マッサージ機とかどう? 首に巻くやつ。わたしも使ってるんだけどね、あれ意外と効くよ」

「ああ、うん。何でもいいわけ?」

「常識の範囲内でね。マンションとか高級車とか油田とか言われたら殴るけど」

 言うと二階堂は「うーん」と唸ってしばし考え、……

「じゃあ、おまえをもらうよ」



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