「もも」と「モモ」
出会ってから2人がこうなるまで、あっという間にだったけれど、宏智は私を探ろうとするような、下手な駆け引きは仕掛けてこなかった。


格好つけることもなく、緊張と照れが混じり合った表情で、


「好きなんだ」


と、言われたときは、すっごく嬉しかった。


久々に体の芯から熱くなるほど、ジンとした気持ちになれた。


そして、彼が緊張している姿から、ナンパな人間ではないことも、ちゃんと伝わってきた。


それなのに私ときたら、素直になれなかった。


その裏には、先に言ったもん勝ち!みたいなところがあったらどうしよう?という、どんよりした不安がまとわりついていたから……。


好き!と先に言われてしまえば、私という女にすぐ飽きて。別れも先に告げられてしまうのではないだろうか?ーーと、とことん勘ぐっていた。


なんとも面倒くさい女です。


そんなどんよりと曇りが晴れたのは、彼のつぶやきがあったからだった。


「そうだ! 彼氏いたら、ゴメン……」


ーーえ、今?


思わず笑った。


後先考えずなら告白してしまうほど、私のことが好きなのだろうか? と、自惚れさせてくれたことが、彼を受け入れるきっかけになったのかもしれない。



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