navy blue〜お受験の恋〜
「お前すごいよ、本当に池之内さんのアシスタントに抜擢されたよ。やったな、おめでとう。」
「嘘!!」
思わず可那は口元に両手を当てる。
さっきまで感じていた疲れが一度に飛んでいく。
足の先から頭のてっぺんまで血液が一気に流れ込むような、熱い気持ちが湧き上がる。
「11月から正式に就任だよ。今月末に社内通達が出る予定。嬉しい?」
友利が無邪気にニコニコして言った。
可那は頷いた。
「もちろん!でも、私の後任はどうなるんですか?」
今はかなりの人手不足だし、可那の代わりになるような人材はメロウには居ないのだ。
「アデールから、中堅の美容部員の子が1人出向してくれる事が決まった。10月からサブトレーナーとして着任するらしいから、中旬くらいまでには引き継ぎを終えて欲しいんだ。それ以降は徐々に本部に行ってもらうようになるから。」
「来月、中旬から…かぁ。」
来月中旬には、本部に出社。
と言うことはあと1ヶ月程で友利に会えなくなってしまうのか、と南は複雑な気持ちで友利の顔を見つめた。
「そう。来月の30日に冬の新製品のプレス発表会があるんだけど、その準備から一緒に動いてもらいたいって。雑誌編集長、美容家、ライター向けの大きいやつ。」
メロウのプレス発表会は、業界でもいつも反響が大きく、数々の雑誌やSNSにも毎回大々的に取り上げられる。
本部はかなりの力を注いでいるし、自分がそんな仕事の中心に立てるだなんて本当に夢の様な事だと可那は思う。
「すごい。信じられない。」
「うん。南をメイクコンテストに出しておいて良かった。いいきっかけになったね。」
「友利さんのおかげですね…。」
可那は小さく呟いた。
「いやぁ、南の実力だよ。」
コンテストに出る事を自分に勧めたのは友利だし、自分を気に入ってくれた池之内に友利は可那が本部を希望している事をさり気なくアピールしてくれたのだ。
頼りないところもいっぱい知っているけれど、そうやって友利の力は大きく作用する。
彼はきっと自分には無くてはならない存在なのだ。
あぁ、友利と離れたくない…と可那は心の底からそう思った。
「頑張れよ。期待してるから。」
にこやかに落ち着いてこちらを見つめている友利がなんだかすごく大人の男に感じる。
それはそうだ、10歳離れている彼は自分よりもずっと経験を積んでいるのだから。
そう思うと急に目頭が熱くなり、鼻の奥がツンと痛んだ。
「何お前、泣いてるの?」
口に手を当て俯く可那を友利が慌てて覗き込んだ。
「友利さんと離れちゃうって思ったら…寂しいなって。」
流れ落ちそうな涙を急いで指で拭き取って、可那はエヘヘと笑ってみせた。
恥ずかしい、こんな風になっちゃう自分、子供のようで、あまり見せたくないと思う。
「大丈夫だよ、本部なんて近いし。一緒に仕事できないのは俺も残念だけど…。」
子供をなだめるような優しい口調に、可那はうんうんと、頷いてみせた。
彼はいつもこんな風にして、子供と接しているのだろうか。
「嘘!!」
思わず可那は口元に両手を当てる。
さっきまで感じていた疲れが一度に飛んでいく。
足の先から頭のてっぺんまで血液が一気に流れ込むような、熱い気持ちが湧き上がる。
「11月から正式に就任だよ。今月末に社内通達が出る予定。嬉しい?」
友利が無邪気にニコニコして言った。
可那は頷いた。
「もちろん!でも、私の後任はどうなるんですか?」
今はかなりの人手不足だし、可那の代わりになるような人材はメロウには居ないのだ。
「アデールから、中堅の美容部員の子が1人出向してくれる事が決まった。10月からサブトレーナーとして着任するらしいから、中旬くらいまでには引き継ぎを終えて欲しいんだ。それ以降は徐々に本部に行ってもらうようになるから。」
「来月、中旬から…かぁ。」
来月中旬には、本部に出社。
と言うことはあと1ヶ月程で友利に会えなくなってしまうのか、と南は複雑な気持ちで友利の顔を見つめた。
「そう。来月の30日に冬の新製品のプレス発表会があるんだけど、その準備から一緒に動いてもらいたいって。雑誌編集長、美容家、ライター向けの大きいやつ。」
メロウのプレス発表会は、業界でもいつも反響が大きく、数々の雑誌やSNSにも毎回大々的に取り上げられる。
本部はかなりの力を注いでいるし、自分がそんな仕事の中心に立てるだなんて本当に夢の様な事だと可那は思う。
「すごい。信じられない。」
「うん。南をメイクコンテストに出しておいて良かった。いいきっかけになったね。」
「友利さんのおかげですね…。」
可那は小さく呟いた。
「いやぁ、南の実力だよ。」
コンテストに出る事を自分に勧めたのは友利だし、自分を気に入ってくれた池之内に友利は可那が本部を希望している事をさり気なくアピールしてくれたのだ。
頼りないところもいっぱい知っているけれど、そうやって友利の力は大きく作用する。
彼はきっと自分には無くてはならない存在なのだ。
あぁ、友利と離れたくない…と可那は心の底からそう思った。
「頑張れよ。期待してるから。」
にこやかに落ち着いてこちらを見つめている友利がなんだかすごく大人の男に感じる。
それはそうだ、10歳離れている彼は自分よりもずっと経験を積んでいるのだから。
そう思うと急に目頭が熱くなり、鼻の奥がツンと痛んだ。
「何お前、泣いてるの?」
口に手を当て俯く可那を友利が慌てて覗き込んだ。
「友利さんと離れちゃうって思ったら…寂しいなって。」
流れ落ちそうな涙を急いで指で拭き取って、可那はエヘヘと笑ってみせた。
恥ずかしい、こんな風になっちゃう自分、子供のようで、あまり見せたくないと思う。
「大丈夫だよ、本部なんて近いし。一緒に仕事できないのは俺も残念だけど…。」
子供をなだめるような優しい口調に、可那はうんうんと、頷いてみせた。
彼はいつもこんな風にして、子供と接しているのだろうか。