navy blue〜お受験の恋〜
みちかは信じられない思いで、乃亜の手を取り百瀬の元へと歩いて行った。
「おはようございます。」
明るいその声に、思わず笑顔になる。
「先生がいらっしゃるなんて…。」
「なんだか心配で、来ちゃいました。」
百瀬の形の良い大きな口元がキュッと上がって笑みを作る。
「そんな…、わざわざここまで…。ありがとうございます。」
緊張で固まっていた身体の力が抜けて行く。その瞬間、思わずみちかは泣きそうになった。
百瀬が慌てて広げた両の掌をこちらに向け申し訳なさそうな表情をする。
「わぁ、友利さん、泣かないでください。」
「ごめんなさい。でも、先生にお会いできて嬉しい…。」
みちかはほんの少し目がしらを抑える。
百瀬から照れ臭そうな笑い声が漏れる。
思わず口をついた素直な自分の言葉は、恥ずかしいというよりもなんだかとても心地よかった。
「良かったぁ。僕なんかでも居たら少しは心強いかなぁと思いまして。正門までご一緒させて頂いていいですか?」
みちかが頷くと、百瀬はホッとしたような顔をして、次に乃亜の前にしゃがみ込んだ。
「乃亜ちゃん、朝早くここまで電車で大変だったね。先生ね、乃亜ちゃんの応援に来たんだ。学校の前まで一緒に歩いて行ってもいいかな?」
「先生と一緒に行けるの?やった!」
乃亜が満面の笑みで、小さなガッツポーズを作る。
「じゃ、先生と手を繋いで行こっか。」
乃亜の手を優しく取り、立ち上がった百瀬はみちかを見つめる。
「参りましょうか。」
百瀬の垂れ目が優しく笑う。
駅を出て、乃亜を真ん中に3人で並んで歩く。
聖セラフの周辺は本当に長閑な地域で朝でも交通量は少なくとても静かだ。
少し前の方を同じように濃紺に身を包んだ家族が歩いている。
私たちも家族の様に見えているのだろうか、とみちかは不思議な気持ちで横に居る百瀬を見あげた。
「空、真っ青ですね。晴れて良かったぁ。」
嬉しそうに空を見上げながら百瀬が呟く。
そして真剣な顔でみちかを見た。
「ご主人様にお手紙、書いて頂けましたか?」
「はい。なんとか書いてもらえて…。少しホッとしました。」
「あ、それなら良かったです。」
ニッと口角を上げた状態で百瀬は口を閉じた。
そして前を向き、少しの間黙って歩いた。
みちかはそんな百瀬の姿を盗み見る。
彼が濃紺を着た姿をみちかは初めて見た。
品の良い、落ち着いた、黒に近い紺色。
それはとてもよく似合っていて、乃亜の若いお父さんの様に見えた。
「おはようございます。」
明るいその声に、思わず笑顔になる。
「先生がいらっしゃるなんて…。」
「なんだか心配で、来ちゃいました。」
百瀬の形の良い大きな口元がキュッと上がって笑みを作る。
「そんな…、わざわざここまで…。ありがとうございます。」
緊張で固まっていた身体の力が抜けて行く。その瞬間、思わずみちかは泣きそうになった。
百瀬が慌てて広げた両の掌をこちらに向け申し訳なさそうな表情をする。
「わぁ、友利さん、泣かないでください。」
「ごめんなさい。でも、先生にお会いできて嬉しい…。」
みちかはほんの少し目がしらを抑える。
百瀬から照れ臭そうな笑い声が漏れる。
思わず口をついた素直な自分の言葉は、恥ずかしいというよりもなんだかとても心地よかった。
「良かったぁ。僕なんかでも居たら少しは心強いかなぁと思いまして。正門までご一緒させて頂いていいですか?」
みちかが頷くと、百瀬はホッとしたような顔をして、次に乃亜の前にしゃがみ込んだ。
「乃亜ちゃん、朝早くここまで電車で大変だったね。先生ね、乃亜ちゃんの応援に来たんだ。学校の前まで一緒に歩いて行ってもいいかな?」
「先生と一緒に行けるの?やった!」
乃亜が満面の笑みで、小さなガッツポーズを作る。
「じゃ、先生と手を繋いで行こっか。」
乃亜の手を優しく取り、立ち上がった百瀬はみちかを見つめる。
「参りましょうか。」
百瀬の垂れ目が優しく笑う。
駅を出て、乃亜を真ん中に3人で並んで歩く。
聖セラフの周辺は本当に長閑な地域で朝でも交通量は少なくとても静かだ。
少し前の方を同じように濃紺に身を包んだ家族が歩いている。
私たちも家族の様に見えているのだろうか、とみちかは不思議な気持ちで横に居る百瀬を見あげた。
「空、真っ青ですね。晴れて良かったぁ。」
嬉しそうに空を見上げながら百瀬が呟く。
そして真剣な顔でみちかを見た。
「ご主人様にお手紙、書いて頂けましたか?」
「はい。なんとか書いてもらえて…。少しホッとしました。」
「あ、それなら良かったです。」
ニッと口角を上げた状態で百瀬は口を閉じた。
そして前を向き、少しの間黙って歩いた。
みちかはそんな百瀬の姿を盗み見る。
彼が濃紺を着た姿をみちかは初めて見た。
品の良い、落ち着いた、黒に近い紺色。
それはとてもよく似合っていて、乃亜の若いお父さんの様に見えた。