navy blue〜お受験の恋〜
家に帰り、乃亜におやつを食べさせたり、ワークに取り組んでいる時もみちかの頭のどこかで、百瀬の事がちらちらと気になっていた。
誰かに似ているなら、似ている誰かが自然に思い出せるまで待てばいい、そうも思った。
だけどどうしても気になってしまう
。
多分、それは最近ではなくて昔会った事があるような人物なのだ。
こんな風に気が散るのは良くない、とみちかは思った。
乃亜にきちんと向き合わないと、乃亜に失礼だ、と自分を戒めたいような気持ちにさえなる。
それでも抑えられなくて考え続けていたみちかは、ついに夕食を作りながら確信し始めていた。
乃亜をお風呂に入れて、髪を乾かし、歯を磨き、絵本を読んで寝かしつける。
そんないつもの流れをとてももどかしく感じた。
やがて暗くした部屋の中、乃亜の寝息が聞こえてくるとみちかはそっとベッドサイドへ移動してランプの灯りを灯した。
スマートフォンに準備しておいたイヤホンを指して、ある人物の名前を検索にかける。
久しぶりに見るその動画サイトを開くと、下へ下へとスクロールして、思い当たる曲名をタップした。
イントロが始まる、彼が歌い出す。
胸がドキドキした。
この人の歌をこんなにちゃんと聞くなんて、一体何年振りだろう。
長い腕と、綺麗な指を伸ばして踊りながら歌う姿。
過去に何度も何度も飽きずに見てはドキドキさせられたそのミュージックビデオに時空を超えたような感覚でみちかは見入った。
思った通りだった。
その顔も、身体の厚みや腕の長さなんかの体型も、何故か髪型さえも。
見当たるところ全部、百瀬は彼に良く似ていた。
桐戸 紡久は、みちかがずっと好きだったアーティストだ。
結婚して妊娠出産子育てと忙しい毎日を過ごしていく中、みちかは昔みたいに音楽を聴くような余裕を無くしていた。
多分、今、彼は30歳くらいになっている。
今、みちかが目にしているのは10年ほど前の紡久の姿で、その若い頃の彼が百瀬に驚くほど良く似ているのだった。
自分があんなにも1人のアーティストに夢中になっていた事は、今考えると何とも言えない不思議な感覚だな、とみちかは思った。
なんとも贅沢な時間を過ごしていたのだろう。
独身時代の自分は、今となってはまるで別の人間のように思えた。
誰かに似ているなら、似ている誰かが自然に思い出せるまで待てばいい、そうも思った。
だけどどうしても気になってしまう
。
多分、それは最近ではなくて昔会った事があるような人物なのだ。
こんな風に気が散るのは良くない、とみちかは思った。
乃亜にきちんと向き合わないと、乃亜に失礼だ、と自分を戒めたいような気持ちにさえなる。
それでも抑えられなくて考え続けていたみちかは、ついに夕食を作りながら確信し始めていた。
乃亜をお風呂に入れて、髪を乾かし、歯を磨き、絵本を読んで寝かしつける。
そんないつもの流れをとてももどかしく感じた。
やがて暗くした部屋の中、乃亜の寝息が聞こえてくるとみちかはそっとベッドサイドへ移動してランプの灯りを灯した。
スマートフォンに準備しておいたイヤホンを指して、ある人物の名前を検索にかける。
久しぶりに見るその動画サイトを開くと、下へ下へとスクロールして、思い当たる曲名をタップした。
イントロが始まる、彼が歌い出す。
胸がドキドキした。
この人の歌をこんなにちゃんと聞くなんて、一体何年振りだろう。
長い腕と、綺麗な指を伸ばして踊りながら歌う姿。
過去に何度も何度も飽きずに見てはドキドキさせられたそのミュージックビデオに時空を超えたような感覚でみちかは見入った。
思った通りだった。
その顔も、身体の厚みや腕の長さなんかの体型も、何故か髪型さえも。
見当たるところ全部、百瀬は彼に良く似ていた。
桐戸 紡久は、みちかがずっと好きだったアーティストだ。
結婚して妊娠出産子育てと忙しい毎日を過ごしていく中、みちかは昔みたいに音楽を聴くような余裕を無くしていた。
多分、今、彼は30歳くらいになっている。
今、みちかが目にしているのは10年ほど前の紡久の姿で、その若い頃の彼が百瀬に驚くほど良く似ているのだった。
自分があんなにも1人のアーティストに夢中になっていた事は、今考えると何とも言えない不思議な感覚だな、とみちかは思った。
なんとも贅沢な時間を過ごしていたのだろう。
独身時代の自分は、今となってはまるで別の人間のように思えた。